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最高裁判所第一小法廷 昭和26年(れ)2437号 判決 1952年4月10日

主文

本件上告を棄却する。

理由

弁護人佐々木良一、同坂野英雄の上告趣意について。

論旨は被告人不出頭のまま審理判決した違法があるという訴訟法違反の主張であって、刑訴四〇五条に定める上告の理由にあたらない。そして記録を精査するに、原審では昭和二二年七月四日の第一回公判期日から同二六年五月八日の第一〇回公判期日に至る迄の各公判期日変更の申請には被告人から診断書が提出されているが、同二六年五月二一日の公判準備期日に被告人をその住居において尋問し次回公判期日を同年六月二日と指定告知したにもかかわらず、被告人は期日変更の申請も診断書の提出もせず同期日に出頭しなかったのを初めとして爾後期日変更の申請も診断書の提出もせずに公判期日に出頭しなかったことが認められる。尤も同二六年六月二三日の最終口頭弁論期日の変更決定の告知は期日後たる同月二五日被告人に送達され、従って同期日の召喚は不適法たるを免れない。しかし、被告人は前記公判準備期日において控訴理由を詳細に供述し、犯罪事実については争わず、単に量刑の軽減を求める趣旨を述べており、また、被告人の弁護人徳江治之助、同北村利弥は前記公判準備期日に立会い被告人のため証人浅野大助、同中村照治の尋問を申請したばかりでなく右両証人の尋問に立会いそれぞれ尋問をし、なお、最終口頭弁論期日には出頭して被告人の権利保護の為め有利な弁論をしていることを認めることができる。それ故本件においては刑訴四一一条を適用して原判決を破棄しなければ著しく正義に反するものとは認められない。

よって刑訴施行法三条の二、刑訴四〇八条に従い裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 沢田竹治郎 裁判官 真野 毅 裁判官 斎藤悠輔 裁判官 岩松三郎)

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